2014年12月22日月曜日

11. 殺生石・遊行柳

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【現代読み】
(これ)より殺生石(せっしょうせき)に行く。
館代(かんだい)より馬にて送らる。
此の口付きの男(おのこ)、「短冊(たんざく)得させよ」 と乞(こ)う。
やさしき事を 望み侍(はべ)るものかなと、

  野を横に 馬牽(うまひ)き向けよ ほととぎす

殺生石は 温泉(いでゆ)の出(いづ)る山陰(やまかげ)にあり。
石の毒気(どくき) いまだ滅びず。
蜂・蝶のたぐい、 真砂(まさご)の色の見えぬほど重なり死す。

又、「清水流るる」の柳は、蘆野(あしの)の里にありて、田の畔(くろ)に残る。
此の所の郡主 戸部(こほう)(なにがし)の、
「此の柳 見せばや」など、折々に の給い聞こえ給うを、
いづく(何処)のほどにと思いしを、
今日 此の柳の陰にこそ 立ち寄り侍(はべ)りつれ。

  田一枚 植えて立去る 柳かな

【語句】
殺生石(せっしょうせき): 前出「09. 黒羽」でも触れているが、退治された「九尾の狐」がこの石に変わったという伝説がある。 現在も那須湯元温泉に史跡として残されており、有毒ガスの多い日は立ち入りが規制されるという。
口付きの男(おのこ): 馬の手綱をとって歩く馬方。
やさしき事を: 風流なことを。
馬引き向けよ: 「野原の横の方で時鳥(ほととぎす)が鳴いたので、そちらの方に馬を向けておくれ」ということで、風流を愛する馬方に応じた即興の句。

「清水流るる」の柳: 西行(さいぎょう)の句 「道の辺に 清水流るる柳陰 しばしとてこそ 立ち止まりつれ」(新古今集)。 謡曲「遊行柳」に脚色。
蘆野の里: 現在の栃木県那須郡那須町あたり。 奥州街道の宿駅「芦野本陣」があった。
田一枚 植えて立去る: 田を一区画植えるだけの時間。 西行ゆかりの柳の木をやっと訪れることができて、その木の下でそれだけの長い時を過ごした、ということで、自分が田植えをした訳ではない。



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