2014年12月27日土曜日

05. 佛 五左衛門

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【現代読み】
卅日(みそか)、日光山(にっこうさん)の梺(ふもと)に泊る。
主人(あるじ)の云いけるよう、
「我が名を 仏(ほとけ)五左衛門(ござえもん)と云う。
(よろず) 正直を旨(むね)とする故(ゆえ)に 人かくは申し侍(はべ)るまま、
一夜(いちや)の草の枕も打解(うちと)けて休み給(たま)え」 と云う。

いかなる仏の 濁世塵土(じょくせ・じんど)に示現(じげん)して、
かかる桑門(そうもん)の 乞食順礼(こつじき・じゅんれい)ごときの人を助け給うのかと、
主人(あるじ)のなす事に 心をとどめてみるに、
(ただ) 無智(むち)無分別にして 正直偏固(しょうじき・へんこ)の者也。
剛毅木訥(ごうき・ぼくとつ)の仁(じん)に近き類(たぐい)、
気稟(きひん)の清質、 尤(もっと)も尊(とうと)ぶべし。

【語句】
卅日(みそか): 晦日(みそか)と同じで三十日のことだが、その年の弥生は小の月で三十日は無かった。 次の章が「卯月朔日(うづき・ついたち)」で始まるので、それと対比させるためと思われる。
(ふもと): 「麓」に同じ。
草の枕: 「草枕」は旅寝のこと。
濁世塵土(じょくせ・じんど): 塵あくたで穢(けが)れた現世。
示現(じげん): 本来は仏が衆生救済のため、姿を変えてこの世に現れること。

桒門(桑門・そうもん): 僧侶のことで、二人は墨染めの僧衣を着ていた。 「桒」は「桑」の俗字。
乞食順礼(こつじき・じゅんれい): 貧しい身なりをした巡礼の様な自分たちの姿を、このように描いている。
無智(むち)無分別にして 正直偏固(しょうじき・へんこ)の者: 文字通りに受け止めると「知恵が無く、正直一途なだけがとりえの人」となるが、逆に「小賢しさや損得勘定を持たない素朴な人物」と好意的に解釈している見方もある。

剛毅木訥(ごうき・ぼくとつ)の仁(じん)に近き: 論語・子路第十三:「子曰く、剛毅木訥、仁に近し」による。 剛毅は意思の強いこと、朴訥は飾り気の無いこと、仁は博愛の心で、こちらはほめ言葉になっている。
気稟(きひん)の清質: 天から稟(う)けた清らかな性質。

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